2018.5.25 : Spotify 1億1,200万ドルの印税未払いに応じる
Spotify
1億1,200万ドルの印税未払いに応じることで作曲者と合意
同社は昨年5月から支払い合意に着手していた
▲(画像)音楽配信サービスは印税支払問題で攻撃の矢面に立っていた
Spotifyは、作曲者から集団訴訟を起こされていた印税未払い問題に、1億1,200万ドル(8,400万ポンド≒約121億円)を支払うことで合意した。
音楽配信サービスのSpotifyは、作曲者のメリッサ・フェリックとミュージシャンのデヴィッド・ロワリーが起こした訴訟を受けて、昨年5月から支払い合意に乗り出していた。週刊誌「ハリウッド・レポーター」によると、支払いのうち4350万ポンドは現金で、それ以外は通常の印税と同様に支払われる模様。
Spotifyは公式な見解に応じていない。
同社はこれとは別に、16億ドルの印税未払い問題を抱えており、トム・ぺティ、ニール・ヤング、ザ・ドアーズを含む大量の楽曲を、使用料を支払わずに無許可で使用しているとして、音楽出版社のWixenから訴えられている。
カリフォルニア連邦地裁に訴えを起こしたWixenの主張によると、Spotifyとの交渉は不調に終わり、同社は楽曲の複製や頒布に関する直接あるいは強制実施権に関する合意に至らなかった。(*1)
Wixenはまた、第三者であるハリー・フォックス・エージェンシーにライセンス管理と印税支払いを委託している点についても、「メカニカルライセンスを扱うには十分な力がない」として訴えを起こしている。
Spotifyは4月にNY証券取引所に上場し、時価総額は295億ドルに上る。この新株発行は、企業が上場する際に通常実施するIPO方式ではなく、「ダイレクトリスティング」で実施された点においても異色である。これは、新株が直接投資家に販売される、つまり引受銀行を仲介しないことを意味している。
Spotify創業者のダニエル・エクは「普通なら、上場企業は一日トレーディングフロアでインタビューを受けながら、その会社への投資がどんなに優れているかを力説するだろうし、普通なら、ダイレクトリスティングを追求する企業などないだろう」「このやり方も悪くはないと考えているけどね、Spotifyがいわゆる普通の会社ではないことを示すためには」と語っている。
上場当初から、Spotifyの株価は伸び悩んでおり、GoogleがYouTubeストリーミングサービスの提供間近と発表した先週には、株価は下落を見せている。
【Words】
class-action case / combined lawsuits 集団訴訟
compulsory license 強制[裁定]実施権
flotation [英]《金融》〔資金調達のための〕新株発行
*1 複製権及び頒布権(文化庁HPより)
US著作権法 115 条によると、楽曲を複製し、頒布するには、強制メカニカルライセンス(compulsory mechanical license)が必要である。作曲家は、一般に、その保有する楽曲にかかる複製権及び頒布権を音楽出版社に譲渡し、音楽出版社は、集中管理団体にそれらを譲渡し、集中管理団体は強制メカニカルライセンスを付与する。米国政府は、強制メカニカルライセンスの法定ロイヤリティ・レートを設定しており、当事者は、これとは別に、レートについて自由に交渉することができるので、法定ロイヤリティ・レートは事実上、上限としての役割を果たしている。
【Note】
今回は番外編です。
いつもお世話になっているSpotifyですが、こんなに便利で素晴らしいサービスもないと思う一方、アーティストに対してちゃんと還元されているのだろうか?と言うのは常に気になっていました。ミュージシャンにきちんと還元されることで、素晴らしい音楽が再生産されるモチベーションになれば、それは全ての音楽ファンの願いだと思うのですが。だって、どう考えてもCD1枚分にも満たないこの月額料金は安過ぎる・・・
一方で、日本ではローンチ未定の「YouTube Music」も気になるところ。私は音楽は今のところもっぱらSpotify派ですが、YouTubeにはお宝ライブ映像やアーティストのインタビュー映像などもあり、ユーザーの嗜好を蓄積しているアドバンテージもありますし、課金形態とラインアップが充実していれば、Spotifyにとってとてつもない脅威になりそうです。