2018.4.2 : Blue Mondayのジャケットに秘められたメッセージ
史上最も高額なシングルのカバー。「どんな気分だい?」でおなじみのあの曲。しかし、12インチのスリーブをより深く理解するための「鍵」とは?
ラジオXにとっては「ブルー・マンデー」と言えば一つしかない。それがニュー・オーダーのブルー・マンデーだ。
1983年の3月にリリースされたこの曲は、前身バンドであるジョイ・ディヴィジョンとの比較から彼らがついに突き抜けることになった、記念碑的な作品である。
ジョイ・ディヴィジョンはハードロックのエッジを利かせたゴシック的サウンドを生み出したが、イアン・カーティスが1980年5月に自殺した後、バンドは再結成により「Movement」をリリース。しかし、これはオリジナル版の空虚なコピーと見なされ、高い評価を得ることはなかった。
「ブルー・マンデー」でバンドはシンセサイザー、シーケンサー、ニューヨークのダンスシーンのサウンドを取り入れることとなった。1982年はほぼワールドツアーに費やし、ニューヨークでは最先端のクラブで最高のサウンドを吸収したのだ。
ファクトリーレコードのデザイナーであるピーター・サヴィルは、リハーサル中の彼らをスタジオに訪ねた際、サウンドを生み出しているその機器にまず魅了されたと語っている。
「テーブルの上から、その素晴らしいものを手にしてみたんだ」とサヴィルは2005年のMojoマガジンのインタビューに語っている。「ドラムのスティーブ・モリスが『フロッピーディスクだよ、見たことない?』と言ったんだ」
「僕はフロッピーディスクを見ながら、『ブルー・マンデーを聞きながらロンドンまで戻っていい?』と尋ねた。バンドの新しい方向性とフロッピーディスクの間に、なんだか本質的な関係性を見た気がしたんだ」
「M1(ロンドンまで続く高速道路)を下りる頃には、ブルー・マンデーのジャケットはフロッピーディスクに決まりだと思ったね」
そしてシングルのカバーは生まれた。実際は5インチのフロッピーディスクは12インチサイズのカードに加工され、銀色のインナースリーブが入り、フロッピーディスクと全く同じ位置に穴が開けられた。
しかし、右側のカラーブロックは何を意味しているのだろう。ただの飾りに過ぎないのだろうか?
答えはノーだ。サヴィルは、「ブルー・マンデー」とその収録アルバムである「権力の美学」のスリーブとの間に、何らかの繋がりを持たせたかった。「権力の美学」のジャケットは1890年代の絵画、アンリ・ファンタン=ラトゥールの「籠いっぱいの薔薇」をフィーチャーしたものだ。
サヴィルはこの絵画を構成する色彩を細かく取り出し、アルバムの裏面に「カラー・ホイール」を作り出した。
サヴィルはこう語る「色でアルファベットを表現するアイディアは、フロッピーディスクはコード変換された情報が入っていることから思いついた。タイトルをコード変換してみてはどうかと思って。それでアルファベットを色彩のコードに変換したんだ」
しかし、これが「ブルー・マンデー」とどう関係あるのだろう?
カラー・ホイールには26色が使用されている。1つ1つの色がアルファベットを表現しているのである。最初の9色は数字。
よって、ブルー・マンデーの表面・背面にある各ブロックの色を文字に読み換えると、シングルのタイトル、B面のタイトル、バンドの名前が読み取れることになる。
表面はこうだ。
F A C 73
B L U E
M O N D A Y
A N D
フリップ部分は
T H E
B E A C H
N E W
O R D E R
しかし、コストの面でちょっとしたいたずらが起こった。特色使い、シングルスリーブの穴と言った特殊加工が多額になってしまったのだ。これが噂になり―――映画「24アワーズパーティーピープル」でも語られているように、レコードが売れれば売れるほどレーベルは損をすると言う、ファクトリーレコードの逸話になってしまった。そして、「ブルー・マンデー」が史上最も売れた12インチになるにつれ、ファクトリーはその財産を失うことになったのだ。
サヴィルはこのエピソードが「誇張されている」と考えている。「トニー・ウィルソンはこの『プリントの神話(刷るほど損する)』の大いなるサポーターだった。誰かが売値を見合うようにしろと言ってくると思ったけど、たぶん請求書が来るまで誰もコストを知らなかったんだと思うよ」
【Words】
impart ~を知らせる、~を開示する
shenanigan(話)悪ふざけ(通例複数形shenanigans)
exponent (思想などの)主唱者、主導者、擁護者
【Note】
今なら誰かしっかりした人が「初版限定」にするとか策を考えそうですが・・・ファクトリーのメチャクチャぶりは、フッキ―の自伝を読むとよ~くわかります 笑
でもその無茶が、数々の伝説につながって行ったんですね。