2018.8.26 : ジョニー・マー的ファッションのススメ
55歳の誕生日を控えるジョニー・マー。
ザ・スミス時代を含む、伝説のギタリストの過去のファッションを、スタイリッシュな写真とともに振り返る
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モリッシ―とマーのソングライティング上の関係性を象徴する、おそらく最高の一枚。おなじみの装いに、マーの右耳だけのピアスと、趣味よく塗られたマスカラがアクセントを添えているのがいい。同様に、普通ならTシャツと組み合わせがちなコーディネイトを、白のパリッとしたボタンダウンシャツに黒のレザージャケットを合わせることで、新鮮さを生み出すことに成功している。白Tシャツの上にシャツを重ねる場合は、ありがちなパターンに陥らないよう、このモリッシーをお手本として何か主張を加えるべきだ。
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スタイルを語るなら、とにかく模倣よりダサいものはそうない。ここでのモリッシーとマーは、ジェームス・ディーンと60年代中期のキース・リチャーズを想起させるが、単なるコピーにはとどまらない。いつものことだが、ディテールこそが ー モリッシーのストライプシャツの着こなしのように ー 全く別の意味をもたらしている。また、メンズフロアで通常扱っていないようなアイテムを取り入れることを恐れてはいけない。注目すべきは、マーのラインストーンのネックレス。パンチあるメッセージをコーディネートに加えている。最後に、モリッシーのように動物製品を避けようと考えるなら、クオリティ感のある素材を使ったフェイクレザージャケットでキメるべき。モリッシーはポリウレタンに手を出さない主義だ。
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なんとも極上な仕立て屋の手にかかったザ・スミス。ジョン・レノンなら「てっぺん目指そうぜ」とでも言うところだろうか。身に着けているアイテムと言うよりは、その着こなしに注目。他の人間もそうするように、モリッシーも単なるルーズフィットのブルージーンズに身を包むことができたかも知れない。しかしモリッシーが選択したのは、バックポケットにグラジオラスを差し、ベルトループにパールのネックレスをぶら下げるという、そのアイコニックなスタイルだった。一方のマーは、セーターとジーンズというミニマルさに、ゴテゴテのアクセサリーをオンするスタイルがほとんど詩的なレベルにまで達している。そこにどんな違いがあるって言うんだろう?いや、大差だ。
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このカットでモリッシーが着用しているものと言えば?ごくシンプルな白いセーター、まるで普通のハイストリートのショップでハンガーに掛かっていそうなものだ。それなのにじっと見入らずにいられないのはなぜだろうか。それは、モリッシーのこの気高いポンパドールのおかげ。まるで、このキラー前髪なら無敵と言わんばかりの風情で写っている。モリッシーのマーに対するポージングも素晴らしく、マーは(写真家)キーフの作品のような陰影で、モリッシーの匂いを嗅いでいるかのようにもたれかかっている。
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マーがファッションにおいてのインスピレーションを得ているのは、なにもキース・リチャーズだけではない。このカットでは、ニューヨーク・ドールズ後のジョニー・サンダースからの影響も、(ギターにさえも)色濃く見て取れる。また、ニューヨーク・ドールズのブレイク前からUKファンクラブ会長を務めていたモリッシーにおいては、さらに濃厚な影響が見られる。ゆったりとしたフィットのジャケットとパンツに身を包もうと考えるなら、明らかに自分のサイズよりもバギー(ダブダブ)に見えるサイズを選択すべきだ・・・父さんに、自分のスーツがどこに行ったかと心配をかけたくないだろうから。ヘアスタイルに関してはポマードがたっぷりと必要になるだろう、そう、たっぷりと。
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スタイリッシュで鳴らしたザ・スミス時代、タートルネックセーターはマーのコーディネイトの定番だった。単品使いでも、カーディガンやブレザーとの合わせ技だったとしても、その組み合わせに間違いはなかった。その美しいネックレスを見逃す心配はいらない(何かをつけている限りは)あえてハズす、のがいいこともある。マーも間違いなく同意することだろう。
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フラメンコを踊りながらギターのリフを同時にこなすというマーの試みをここではあえて無視しよう。その代わりに注目すべきはそのスタイルだ。タイトめなブレザーとクルーネックのTシャツ、黒のスリムパンツはここ数年のマーのお気に入りで、決して飽きることがない。さらに個性を強めるために、ジャケットの襟にはピンを数本刺し、無地よりは、グレアム・コクソンを気取ってボーダーのTシャツをチョイスしよう。サイン入りヘッドの一風変わったオフセットボディのギターも、スタイルを損ねることがない。
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ハズす心配のない2つボタンの黒いブレザーに手が伸びるのは仕方がないこととは言え、退屈なスタイルに見せないためには、時には色やスタイルでの冒険も必要だ。襟幅が狭いノッチドラペルでなく、ピークが広めのこのジャケットのようなスタイルを試してみては?ピンストライプには着痩せ効果もあるし、黒地にライトブラウンのストライプ入りのパンツは、ダークコーディネイトにありがちな地味になり過ぎると言う難点を防いでくれる。ブレザーのスタイルが多様になれば、クローゼットの容量は逼迫する。全く、贅沢な悩みだ。
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冬はもうすぐそこまでやって来ているが、ジョニーはそんなことを気にはしない。ボスはピーコートのロックな着方を熟知しているからだ。陰影のあるミリタリー・グリーンのコートに、スキニーなブルーデニムとスエードのブーツを合わせ、目には死の影が宿り、不気味な雰囲気を漂わせている。信じて欲しい、睨みつけるようなその眼光を避けようとしたのだが、どうにも避けられなかった。
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アンディ・ルークから、プラスのインスピレーションを得よう。
嘘を付く必要なんてない。「デニムにデニム」は大体においてハズレのアイディアであり、「デニム・デニム・デニム」はなおさらだ。
そのことが言いたいのではなく、牛飼いのように見えたり、通りすがりの人から「ヘイ、カウボーイは元気かい?」などと声をかけられたくないなら、ちょっとしたテイストを加えればよい。アンディをお手本にして、まずはアイテムのサイズ感をしっかり確かめよう。Gジャンのポケットからマールボロのパッケージがはみ出していないことも重要だ。そして、レザーのブーツはまた別の日に取っておくことにしよう。(まさに、このカットでアンディが履いていなくて良かった)1968年頃のジョン・レノンでさえも、このアンディのデニム姿には敵わないだろう。
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ファッションに関してザ・スミスが我々に示したことと言えば、スタイリッシュに見せる為に贅沢な服に身を包んだり、大きなポケットの付いた服をわざわざ着る必要はない、ということだ。マーは、ザ・スミス以前の時代にヴィンテージ古着屋で働いていた経験から、そのことにきっと気づいていたに違いない。アイルランド人であるジェームス・ディーンの生まれ変わりのように振る舞い、いくつもの名曲を書き上げ、いつの時代も愛され続ける伝説のバンドのメンバーとして、少々の物議を醸す。それが彼のスタイルだ。
シンプルな黒いタイにストライプのシャツ、もしくは慎ましやかなポロシャツであっても、自分自身がクールでいさえすれば、それで出かけることができる。シンプルなスタイルとは、そういうものである。
▼Words
turn heads 注目を集める、魅力がある
banality 陳腐さ
tacky ダサい、趣味が悪い(人には使わない)
have no truck with 何も関係を持たない、付き合わないようにする
"toppermost of the poppermost" ビートルズ好きには有名な、彼らの映画のフレーズらしいですが、「てっぺん目指そうぜ」的な意味合いのジョン・レノンのセリフ
bling ジャラジャラ、ギラギラ・・・ゴテゴテしたアクセサリーを身に着ける
first world prpblems 取るに足らないような些細な悩み。元々は、先進国(first world)ならではの贅沢な悩み
denim clad デニム姿の
▼Note
昔は1枚目に見られるように、モリッシーとの2ショットによりジョニーのクールさが際立って感じられましたが、こうして見ると、6枚目の若かりしジョニーの姿って実に耽美。生まれ持ったスター性をやっぱり感じます。
GQと言うオシャレ指数の高いテキスト、しかも、UK版と言うややヒネリの効いた(斜め上目線・・・)テキストに、いつものガーディアンやインディペンデントより若干苦戦しました 笑